ないしょ

暮らしの中に生きている仏教語
 普段、私たちの生活の中で何気なく使っている言葉の中に、仏教に由来することばが数多くあります。
仏教語の解説を、音声でご鑑賞ください。

朗 読:米澤 美由紀    音 楽:こゆみこバンド


 「ないしょ、ないしょ、ないしょの話はあのねのね……」。
昔なじんだ童謡の歌詞。不思議にシュールな世界である。
 「かあさん/あのね」と耳もとに呼びかけた幼な子の秘密の願いとはいったい何だったのか。
今はそれも すっかり記憶の底に沈んでしまっている。

 さて、「ないしょ」はいうまでもなく秘密のことだが、もともとは「自内証(じないしょう)」といい、自己の内心の悟りを表した。これは、言葉で他人に伝えることが大変むずかしい。

 お釈迦さまは、涅槃に入るまえ阿難尊者におっしゃった。
「今まで自分の胸の内に秘して、人々に伝えなかったものは何もない。真理は あらゆる人々にいつも明かに開かれている。だから自分が消えて亡くなろうとも悲しむなかれ」と。

 仏法その身に満ちて生き抜くことの何とおおらかなことか。

 それに引きくらべ、私たちは随分せこい。この胸の内には、他人に聞かれたくないやましいことが山ほどあり、その一つでも打ち明てしまうと、とたんに気分すっきりなのだ。女の子なら「ヒ!ミ!ツ!」とかわいくおどけてみせれば、男は鼻下20センチ?

 それにしても私たちは、子どものころの「ないしょ」に、垢の上塗りを続け、長じてしまったのだろうか。

(茉莉花vo.9より)

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